面影、彼方
デレステ・メモリアル3の後の高峯のあの話。
撮影を担当したカメラマンのもとに1人の年配の男が近づく。
「やあ、久しぶりに仕事を見させてもらったよ。」
「いやあ、お恥ずかしいです。まだまだ先生の域には遠く及びません。」
先生と呼ばれた男は先ほどまでフラッシュを浴びていたアイドルの姿を見やる。
「それにしても信じられん。彼女は一体?」
「え、ああ売り出し中のアイドルですね。高峯のあと言うそうですが。」
「……もう20年以上も昔の話だがね。私も彼女を撮ったのだよ。」
「子役時代ってことですか?」
「ああいや。正確には彼女と瓜二つの女性を撮ったということだよ。
あまりに似すぎていてね。そうか、やはり高峯くんの縁者だったか。」
「有名な方だったんですね。いや、全然存知上げませんでした。」
「いや……全く日の目を見る事がなかった。
アイドル冬の時代なんて今じゃ言われてるがバラドルというものの萌芽かね。
バラエティー番組で器用に立ち回る事がアイドルに要求された時代だ。
彼女は……あまりにも不器用だった。」
「……それでも、今なおこうして覚えていらっしゃる?」
「被写体をあれほど美しいものと感じた事はなかった。
にも関わらず彼女を埋もれさせてしまった己の未熟さと世をね、今でもうらめしく
思うのだよ。」
「彼女もそうなるのでは、と?」
「……」
カメラマンは師に1枚の写真を手渡す。
「先ほどの写真です。最初は無表情というか感情が掴めなかったんですがね。
中断後に見違えました。この顔が出来る彼女ならば、引き出せるプロデューサーならば。」
スタジオの出口、今まさに出ようとする2人を見る。
「きっと、大丈夫ですよ。」