孤高のグルメ①新潟県佐渡市の海鮮丼
時間や社会に囚われず幸福に空腹を満たす高峯のあの話。
(…とにかく食欲が満たされていなかった。
私はこの島に星を観に来たがあいにくの雨。星空を観ることもかなわず途方にくれていた。)
(私の経験上、食事場所に困ったらタクシードライバーに聞け!港付近で聞き込んだところ1軒の店に辿り着いた。)
(なるほど鮮魚店直営か。これは期待出来そうだ。メニュー表を眺めていると店員がやってきた)
「いらっしゃい!何になさいますか?」
(私は出来るだけ物怖じせず明瞭に言う。注文を聞き返されるのは得策ではない)
「海鮮丼を1つ。」
(その時衝撃的なものが目に飛び込んできた。)
「このふぐの子というのは?」
「ああ、ふぐの卵巣をね、粕漬けにして無毒化したものです。」
(粕漬け!そういうのもあるのか……珍味、まして魚卵系にはあまりよい思い出はないけれど…)
「じゃあそれも1つ。」
(ほどなくして丼と粕漬けがやってくる。)
「記憶しろ…この味を…」
(うん、美味しい。いかにも佐渡って味だ。
ブリってこんなに美味しいものだったか。
そしてこの粕漬け!ご飯になんて合うのか!
山椒はどうやら不要のようだ)
「おいしくて…それにほっとする」
(店を出ると雨は上がっていた。曇天で星は見えないけれどそれ以上に満たされるものを感じていた。暗闇に光る星ならぬ電気の明かり。あれはよく見かける宅配業者のセンターか。ふっ…猫とは本当に縁がある…)