孤高のグルメ③東京都杉並区のビリヤニ
時間や社会に囚われず幸福に空腹を満たす高峯のあの話。
(新高円寺で撮影を終えた私は青梅街道を歩いていた。地下鉄の駅はすぐそこだ。だが帰路に着くには)
(おなかが……すいた。)
(よし。そうと決まれば店に入ろう。幸いこの辺りは若者の街、それも生活する街だ。店に困ることはないだろう……今の私は何腹なのか……?)
(インド・ネパール料理……この後は仕事も入っていないし香辛料の匂いが染み付いても問題ない。そういえばインド料理店の多くはその実シェフがネパール人である事が多いと聞くが……。)
(店に入るとおすすめ商品として日替わりビリヤニが載っていた。今日はチキンらしい。ビリヤニとは『スパイシー炊き込みご飯』とのこと。なるほど。炒めるのではなく……これにしよう。それから飲み物は……ラッシー。あと何か1品欲しいところだが。)
「……ビリヤニとラッシーを。
あと、何か1品料理はないかしら。チキンティッカとかあればいただきたいのだけど。」
店員がメニュー表を持ってきてくれた。
「チキンとチキンが被ってしまうからモモとかシークカバーブとかオススメ。」
(モモ?もも肉……まさか桃ではないだろうし)
疑問が顔に出たのかメニュー表を開きながら説明をしてくれた。
「モモはネパール風の蒸し餃子。」
「ではそれもお願いするわ。」
「記憶しろ…この味を…」
(これがビリヤニか……うん。このインディカ米のパラパラとした食感が良い。香辛料も相当色々と入っている。複雑な味わいだ。)
(そしてラッシー。市販の飲むヨーグルトと何が違うのか専門店で飲むこれはもうこれだけのために足を踏み入れたい美味しさ。)
「これはビリヤニにかけて下さい。味変わります。」
(そう言われてビリヤニの付け合わせについていたヨーグルトソースの存在に気付く。デザートかと思っていた……これは!味がまろやかになりまた違う感覚が味わえる……チキンとも抜群の相性……。)
(そうこうしている内に遂にモモの到着だ。これにもソースがついている。こちらは辛いソース……ふふ。これは美味しい。蒸し餃子と言っていたがむしろこれは小籠包に近い。皮の中に汁が含まれていてジューシーだ。)
(……存分にネパールを堪能した……今の私は身も心もネパールだ……)
「May the Meal be with you」
(そういえば昔読んだ小説の舞台がこの街だったな……)